SERIALIZATION【連載:ヨガスタジオのこれから】

【ヨガをすることで「手に入るもの」を伝えよう】

ヨガをする人が本当に求めているもの◆

ドリルは「穴を開ける」というベネフィットを提供するツール。では、ヨガはどんなベネフィットを提供するツールなのでしょうか?


たとえば、

・何歳になっても旅行に行って自分の足で歩ける(シニアヨガ)

・安心して出産に臨める(マタニティヨガ)

など、同じ「ヨガ」でも提供できるベネフィットは大きく異なります。


ヨガのような無形サービスの場合、要望に応じて臨機応変に対応できるため、告知文章を書く際につい欲張ってしまいがちです。「運動不足を解消できる、ダイエットできる、リラックスできるレッスンです」のようにベネフィットを羅列している方も多いですよね。ですが、ベネフィットを欲張っている場合、またベネフィットが明確でも実際にそれを提供できていない場合には、以下のような食い違いが起こります。


・やせると思って始めたのにやせない

・「初心者OK」と書いてあるけれど、きつかった

・「リラックスできる」と書いてあったけれど、先生が話好きでうるさい


ドリルでいうと、穴を開けられると思って買ったのに穴が開けられないのです!

提供したいベネフィットを明確にすると同時に、きちんとそのベネフィットを提供できるサービスになっているか見直すことも重要です。

ベネフィットを羅列している方にありがちなのが、提供できることが多ければお得に感じてもらえる、差別化できると考えているパターンです。一見お得に見えますが、実際はそんなことはありません。

たとえば、以前はスポーツクラブといえばジム、プール、スタジオが当たり前のようにありましたが、最近ではプールを設置しないスポーツクラブが増えてきました。プールやスタジオを設置するには広い土地が必要になり、家賃や水道代など高額な費用が発生します。つまり、そのぶん料金を高額にしないと賄えないということです。ですが、ジムしか使わない人は「プールもスタジオも使わないから、もっと安いほうがよい」もしくは「もっとマシンが充実しているジムがよい」と考えるでしょう。そんな方のために、最初からジムのみに特化したサービスが増えてきたのです。家賃が抑えられるため料金を下げても利益を出せるようになりますし、会員さんの満足度も高まります。ジムに特化することで「筋力アップで美BODY」といったベネフィットの訴求もしやすくなります。サービスを厳選することで、よりベネフィットを実感してもらいやすくなるのです。

ドリルでも、「先端付け替えで小さな穴から大きな穴まで、どんな素材でも穴を開けられる」といって高額なドリルが販売されていたとしても、「家の壁に小さな穴を開けたいだけ」であれば、手頃なものを1つ購入すれば十分です。

もし今、あなたのサービスが多様化しているなら、提供したいベネフィットを絞るタイミングかもしれません。せっかく体験に来てもらっても「思っていたのと違った……」となってしまうと、もう二度とレッスンを受けようと思ってもらえないでしょう。


◆ベネフィットを突き詰めると新たなベネフィットが生まれる?◆

「ダイエット」や「リラックス」など、わかりやすいベネフィットを提供する場合、ライバルが多くなります。一方、顧客が自覚していない潜在的ニーズを満たすベネフィットを提供できると、ライバルが少なくなり、顧客満足度も高くなってリピートしてもらいやすくなります。

私は10年以上、ヨガ業界で裏方として多くのヨガの先生を見てきました。ヨガスタジオのオープンや運営に携わったこともあります。

あるヨガスタジオのオープン時のこと。著名な先生や指導歴が長く認知度も高い先生方がずらりと並ぶなか、1人だけ認知度も活動実績も少ない先生・Sさんがいました。やはり認知度は集客に影響するもので、オープン当初Sさんのレッスンは生徒さんがまったく入らず、泣いている姿を何度も目にしました。しかし半年後、Sさんは集客率No.1、常に生徒さんが満員の人気インストラクターになりました。生徒さんのリピート率が圧倒的に高かったのです。

なぜそんなことが起きたのか?



 次回更新予定:10月1日(金)【なぜ、リピート率が高いのか?】