SERIALIZATION【連載:ヨガスタジオのこれから】

【ヨガをすることで「手に入るもの」を伝えよう】

Sさんは「ヨガをきっかけにつながりを増やす」というベネフィットを提供することに成功したのです。

親しみやすいキャラを売りに、ヨガ初心者でも安心して参加できるレッスンであることをアピール。まずは自分と生徒さんとの関係性を築き、ヨガ初心者がレッスンに参加する心理的ハードルを下げることに注力しました。レッスンに来てくれた生徒さんの顔写真を撮って全員の名前を覚え、生徒さんの体調などちょっとした変化にも気づけるほど、生徒さん一人一人との距離をぐっと縮めたのです。

そのうえで、その生徒さんが仲良くなれそうな人たちとの会話に自然に混ぜるなど、持ち前の明るさやコミュニケーション力で生徒さん同士をつなげていきました。すると、生徒さん同士がヨガ以外の時間に会ったり、一緒に出かけたりするようになっていったのです。生徒さんが新しい生徒さんを連れてくることも多く、Sさんの周りには常に人があふれていました。

つまり、Sさんは初心者が参加しやすいヨガレッスンを提供しながら「都会で一人暮らししているけれど、会社以外に自分の居場所がほしい」「仕事以外で話せる友だちがいたらいいのに」といった、ひとり暮らしの方の潜在的ニーズを満たすことに成功したのです。



Sさんは、「初心者大歓迎、基礎が身につくレッスン」といった内容でPRしており、「生徒さん同士をつなげる」というベネフィットを提示していたわけではありません。ですが、レッスン内容は初心者が安心して受けられるものであり、どうすれば初心者が安心して過ごせるかがとことん考えられていました。その結果、人との出会いやつながりを作れる場になっていたのです。

Sさんは日曜日の早朝レッスンを担当しており、レッスン後に朝ごはんを一緒に食べる企画を途中から始めました。ヨガレッスン後に生徒さんたちの会話が終わらないため、「それならもう、みんなで朝ごはんを一緒に食べてもっと仲良くなる場を作ろう」と考えたのです。その結果、常連さんは大喜び。はじめてレッスンに来た方もあっという間にリピーターになっていきました。

これは彼女だからできたことです。特技や強みを生かしながら、掲げたベネフィット「初心者が安心して過ごせる場作り」を突き詰めて考えた結果です。その後、Sさんはヨガフェスタなどでも活躍する名実共に人気の先生となっています。

特徴や立地、時間などの条件でレッスンやスタジオを選ぶ人は、より良い条件のものに簡単に乗り換えてしまいます。条件だけで勝負すると大手に負けてしまうので、個人や小規模スタジオには向かない戦略です。そのため、Sさんのように「あなただからこそ提供できるベネフィット」で、生徒さんにリピートしてもらえる存在になることをおすすめします。



◆ヨガを通して、どんなベネフィットを提供したいですか?◆

ベネフィットを明確に打ち出せていれば、WebサイトやSNS、チラシなどの発信情報を見た人が、何を期待して来てくれるかがイメージできます。


大切なのは、この3つ。

1. 誰のどんな悩みに寄り添いたいかを明確にすること

2. ベネフィット=悩みの解決法を伝えて、ヨガを続けた先にある姿をイメージさせること

3. あわせてそのベネフィットを提供できる理由=メリットを伝えること

これらを常に考えて発信し続けることで、あなたのベネフィットに共感した人が体験に来てくれます。そして、実際のレッスンでベネフィットを実感することによって継続してくれるようになります。


まずはベネフィットを発信して、「これは私のためのヨガかも?」とあなたを見つけてもらえる状態を作っていきましょう。

次回はベネフィットとともに伝えるべき「メリット」についてお伝えします。



 次回更新予定:10月8日(金)【なぜ、リピート率が高いのか?】